すぐ隣にM子ちゃんという女の子が住んでいた。
私より3つか4つ上で、 とても賢くて勉強ができるということで有名だった。
M子ちゃんは時々私のところに遊びに来ていた。
私はおもちゃのピアノを持っていた。
父の親友でバイオリンが上手なおじさんがいたのだが、そのおじさんがプレゼントしてくれたものだった。
グランドピアノの形をしていて、おもちゃなりにも音がちゃんと出て、
母に、簡単な「さいたさいた」などのメロディーの弾き方を教えてもらい、よく遊んでいた。
あるとき、遊びに来たM子ちゃんが、このピアノの中がどうなっているのか見たくないか? と私に尋ねた。
私は面白そうだと思って同意した。
M子ちゃんは錐のようなものを持ってきて、ふたをこじ開けようとしたが、うまくいかず、
しまいに錐であちこちに穴をあけ、さんざん叩いたり、突いたりして、そのピアノをめちゃくちゃにしてしまい、
あげく帰ってしまった。
母はそのめちゃくちゃになったピアノを見てびっくりして「どうしたの?」と聞いたので、
ことの成り行きを伝えると、憤慨した顔をしたが、それ以上のことは何もなかった。
M子ちゃんは、どうしてこんなひどいことをしたんだろう。
今は分かる気がする。
M子ちゃんは、このおもちゃのピアノがうらやましかったに違いない。
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